【孤独を感じている女性へ】
太古の深い…深い…森の中、一匹の蝶々が羽ばたきました。
その取るに足らない、一匹の蝶々がまき起こしたかぼそい風は、やがて嵐となり、この世界のありとあらゆる場所に吹きわたりました。
海は荒れ、大木すらもなぎ倒し、人々は畏れおののき、行き場をなくしたその風は、もうやることはないと、一匹の蝶々が起こした風としての役目を終えました…
おはようございますお嬢様。
少々刹那的な散文からの始まりになりましたが、その広いお心でどうかお許し下さいませ。
それよりも…
昨夜はよくお眠りになられましたか?
失恋してお泣きになっておりませんでしたか?
孤独を感じて寂しくしてはいませんでしたでしょうか?
私がご心配な事はただ、それだけでございます。
ご挨拶が遅れました。
私は白執事の『L』と申す者です。
とある紳士からのご用命で、女性を癒すようにと、ここへ来るように指示されております。
それではお嬢様どうぞよろしくお願い致します。
私Lは、ただ疲れた女性の心を癒すためだけに存在している執事ですので、どうぞご安心してお安らぎくださいませ。
それでは何故、私Lがあのような悲しい前置きを語り、お嬢様に逢いに来たのかを、ご説明させて頂ければと思います。
【カオス理論】

カオス理論。およそ普通に生活しているならば耳慣れない言葉だと思います。
カオス理論とは、力学系の一部に見られる、数的誤差により予測できないとされている複雑な様子を示す現象を扱う理論である。 カオス力学ともいう。
ですが、今日お嬢様のもとへ私が訪れたのもこの理論によって引き寄せられているのです。
『何言ってるかわかんな~い』
ってお嬢様でも、もちろん大丈夫でございます。
ご心配はいりません。
意味がわからなくても私Lが、貴女様を癒すためにここへ来ている事が、すでに理論上必然なのですから。
【蝶々と女性】

私Lは全ての女性を蝶々と思っております。
とっても自由にひらひらと翔ぶ蝶々は、綺麗で優雅、されど掴み所のない羽ばたきは、女性を比喩するには、この上ない生き物です。
例えれば猫のツンデレ…
おっと!失礼致しました。
つい口が勝手に。
女性の方をツンデレなどとは、私Lはこれっぽちも思っておりませんので、どうぞ忘れて下さいませ。
ここからお話は少し変わりますが、もしこんな事を考えている女性がいるならば、私の話にほんの少しだけでも、耳を傾けて頂ければ幸いでございます。
私なんかいなくても何も変わらない…
私なんか消えてしまえばいい…
私なんか…
と、こんな悲しいことを考えている女性の方がいるならば、それほど無意味なことはありません。
今すぐにやめて下さい。
私Lがこのようなことをお嬢様にお願いするその理由は、それが理論上間違いだとわかっているからです。
『世界が貴女の存在を望んだ』
のですから。
【バタフライエフェクト】

バラフライエフェクトとは、
非常に些細な小さなことが様々な要因を引き起こしだんだんと大きな現象へと変化することを指す言葉である。
クレオパトラの鼻があと一ミリ低ければ、およそ地球の全体は変わったと言われています。
これもバタフライエフェクトと言います。
そしてこの、バタフライエフェクトを私Lなりに解釈すると、望まれぬものは何も存在していないという結論に至ります。
貴女がこの世界に存在すること、それ自体がすでに大切な約束事であり、次のバタフライエフェクトをまき起こし、未来を作り上げて行くのだと私Lは考えております。
おっと!少し喋り過ぎましたね。
お嬢様があまりにも美しすぎるから、時間が経つのも忘れてしまいました。
それではまたここで貴女様の執事として会える事を、Lも楽しみにしております。
どうぞその、素敵な笑顔を忘れずに…
白執事Lより
コスモスの花言葉『乙女の真心』を添えて。